AIの発展を支える基盤は、アルゴリズムやGPUではなく電力網に移りつつある。米国ではデータセンター建設が経済成長の柱となる一方、急増する電力需要が脆弱な送電網を直撃し、停電や電力料金上昇への不満を招いている。高盛やデロイトの調査では、AIの需要は既存の電力インフラの増強ペースを大きく上回り、データセンター企業は自前で発電を検討せざるを得ない状況にある。
対照的に中国では、電力供給の問題は既に「過去の課題」とされている。数十年にわたる発電・送電・原子力技術への先行投資により、全国で80〜100%の余剰容量を維持し、AI需要の急拡大にも柔軟に対応できる。過剰な電力をデータセンターが吸収する仕組みも形成され、米国の15%前後しかない冗長性との差は鮮明となっている。
この差異は単なる電力量の違いではなく、制度と投資文化の構造に根ざしている。国家主導で長期インフラを整備する中国に対し、米国は短期回収を求める民間資本依存が障害となり、電力基盤強化の遅れを招いている。さらに米国では住民電力料金の上昇や環境規制の対立が足かせとなり、拡張は政治的・社会的にも困難を極める。
結果として、中国はAI産業の「電力インフラ先行型」モデルを完成させ、米国との差を拡大しつつある。今後のAI競争の勝敗を決めるのは、電力供給の安定性・単価・拡張速度といったインフラ要因であり、中国の優位は制度と投資構造に支えられている。