バイトダンスのAI部門であるAI Labに関し、「責任者の李航(Hang Li)が正式に辞任した」との報道が出回ったが、同社関係者はこれを否定し、実際には李航が退職後に顧問として返聘され、管理範囲も変更されていないと明かした。2025年初頭には、Google DeepMind元副総裁の呉永輝(Yonghui Wu)が大模型Seedチームの基礎研究責任者として加わり、李航はその直下に配置された。これにより、AI LabはSeedへと完全に統合され、技術支援部門から戦略事業部門へと格上げされる組織改編が完了した。
AI Labは2016年に設立され、初期はマイクロソフトアジア研究院の馬維英(Weiying Ma)が率い、張一鳴(Yiming Zhang)へ直報する体制で最先端研究を担ってきた。ピーク時には150名超の研究者を抱え、AI for Scienceやロボティクスなどをカバーし、抖音(中国版TikTok)や今日頭条(Toutiao)の初期成長を支えてきた。しかし、2020年以降は研究から事業支援に軸足を移し、抖音事業部配下に配置転換されていた。
近年、DeepSeekの躍進がバイトダンスのAI戦略を根本から揺さぶった。同社の大模型「豆包」を抜き、21日で2000万DAUを突破するなど驚異的な成長を見せたことで、バイトダンスはAI部門の抜本改革を決定。AI LabとSeedの統合に加え、呉永輝(Yonghui Wu)を起点とした新たな指揮系統を敷いた。Seedは従来の研究所型AI Labとは異なり、研産一体型かつ製品指向の構造を持ち、資源集中による開発効率の向上が期待されている。
また、李航(Hang Li)はNEC、マイクロソフト、ファーウェイといった企業での豊富な研究実績を有し、IEEEやACLなどのフェローに名を連ねる著名研究者でもある。一方で、バイトダンス内部では最近、人事の流動も激しくなっている。Seedの大言語モデル責任者・喬木(Qiaomu)が不祥事で退任、視覚部門トップの楊建朝(Jianchao Yang)の退職も噂され、Flow部門でも幹部が次々と離職し投資家との接触が報じられている。
このような変化は、バイトダンスが単なるAI応用企業から、AI研究開発の主導権を再び取り戻す方向に転換していることを示しており、中国AI業界全体でも大手の再編が進行している局面にある。