米国政府によるAI半導体輸出規制の強化を受け、NVIDIAは主力製品「H20」チップの中国向け性能削減版を7月に投入する方針を固めた。H20は当初、中国市場で販売可能な中で最も高性能なAIチップとして位置づけられていたが、米商務省が突如、同チップの輸出に新たな許可申請を要求。事実上の禁輸対象に変更されたことで、NVIDIAは緊急対応を迫られた。
今回投入される新バージョンでは、メモリ容量をはじめとする複数の技術仕様が大幅に削減される。既に中国の主要クラウド企業などに向けて説明が行われており、顧客側は仕様変更に応じたモジュール再設計などで対応する見込みだ。NVIDIAおよび米商務省は現時点でコメントを控えている。
財務データによると、中国市場はNVIDIAの2023年度(2024年1月終了)売上の13%、約170億ドル(約2兆6,000億円)を占めており、最大の半導体消費国としての重要性が改めて浮き彫りとなった。米国による規制発表直後には、創業者兼CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏が北京を訪れ、政府関係者との会談で中国市場の不可欠性を繰り返し訴えた。
なお、H20はもともと2023年10月の規制強化後に、NVIDIAが中国専用として設計した代替製品であり、2024年1月時点ですでに180億ドル(約2兆7,000億円)を超える注文が寄せられていた。