中国版iPhone向けAIに採用されたのはアリババ65%、バイドゥ35%──Appleの戦略変更が明暗を分ける

出典:https://mp.weixin.qq.com/s/HpacR0jfRkCgCNqwRs97LA

概要ポイント
  • 中国版iPhoneのAI機能はアリババとバイドゥが担当し、技術比率は65%対35%。
  • バイドゥは技術方針とユーザーデータを巡る対立で主導権を失った。
  • バイドゥは新たにERNIE 4.5 Turboなどで技術挽回を図る。
  • AppleのAIは幾度も延期され、発表内容の信頼性にも疑念。
  • iPhoneの中国市場での販売不振が明らかとなり、AIが挽回の鍵となる。
本文

Appleが中国市場向けに展開するiPhoneのAI機能において、技術提供先の内訳が明らかになった。複数の関係者によると、AI機能の技術構成比はアリババが65%、バイドゥが35%。契約金額は年間100億元(約2,100億円)を超えるとされ、バイドゥはクラウド検索、画像・視覚認識、音声起動機能を担当し、それ以外のAI能力はアリババが提供している。


かつてはAppleの唯一のAIパートナーだったバイドゥは、戦略ミスにより主導権を失った。ひとつは生成AIの技術戦略で、2023年以降、バイドゥは基盤モデル開発よりも応用事業に注力したことで競争力が低下。もう一つは、Appleとの間でユーザーのAI利用データの所有権を巡る交渉が決裂したことにある。Appleは一貫してプライバシー重視を掲げており、データ収集に難色を示した。


最終的にAppleはアリババとの提携を選択。アリババは自社の通義千問モデルを通じてAI内容審査など中核機能を担い、バイドゥはSiriの中国語最適化や画像検索など補助的な機能を担当するにとどまった。ただしバイドゥも巻き返しを図っており、ERNIE 4.5 TurboとX1 Turboを発表。競合のDeepSeekを上回る性能と、コスト25%という優位性を武器に再び存在感を示しつつある。


一方、AppleのAI戦略そのものに対しては疑念の声も上がっている。Appleは2024年のWWDCで「Apple Intelligence」を発表したものの、その多くが実現されていないとされ、実装された唯一の機能はSiri起動時の光のエフェクトだったという報道もある。また、中国向けのAI機能リリースは度重なる延期の末、iOS 18.6でようやく限定的な提供が始まる見込みとなっている。


こうした混乱の中、Appleは中国市場でのシェアを落としている。IDCによれば、2025年第1四半期におけるAppleの出荷台数は前年比10%減、市場シェアも2ポイント近く低下。大手5社の中で唯一のマイナス成長を記録した。


AppleにとってiOS 18.6は、中国市場における信頼回復をかけた重要な一歩となる。AI機能が期待に応えれば、「グローバル×ローカル」モデルの成功例として今後の国際戦略にも影響を与える可能性がある。