アリババのAIGC主力人材が再離職、薄列峰(Bo Liefeng)が米国大手でマルチモーダル部門VPに就任

出典:https://mp.weixin.qq.com/s/yseY0E4RF4WkqQ5pUYh0PQ

概要ポイント
  • 薄列峰(Bo Liefeng)がTongyi Labを離職し、米国大手企業のマルチモーダル部門VPに就任。
  • EMOやAnimate Anyoneなど、QwenのAIGC技術を主導した中心人物。
  • Tongyi Labでは3ヶ月以内に2名の幹部クラス人材が離職。
  • バイトダンスやファーウェイがAI人材の争奪を強化中。
  • アリババの生成AI事業再編が人材流出の要因との見方もある。
本文

アリババ傘下のTongyi Labで人物動画生成技術を率いていた薄列峰(Bo Liefeng)が、4月30日付で同社を離職した。移籍先は米国拠点の大手インターネット企業で、マルチモーダルAI部門のVP(Vice President)に就任したとされる。このポジションは、同社の組織再編後に新設されたとみられ、競業避止義務への対応策としても注目されている。


薄氏は深層学習以前からマルチモーダルAIの研究に従事しており、Amazon Goの初期メンバーとして第2世代アルゴリズムを構築した実績を持つ。その後、京東数科、そしてアリババへと移籍し、XR・画像生成の中核を担った。Tongyi Labでは、Qwenに搭載されるAIGC機能の中核として、EMO(Emote Portrait Alive)や一鍵換装のOutfit Anyone、Animate Anyoneなどを開発。これらの技術はSNSでの大規模拡散を生み出し、2024年中国生成AI大会でも大きく取り上げられた。


これらの技術は、OpenAIのSoraに対抗するアリババの戦略的柱とされ、生成AI領域での競争力を支える基盤でもあった。今回の離職により、アリババは重要な技術資産と人材の双方を失うことになる。


なお、薄氏は近年離職した唯一の幹部ではない。今年2月にはTongyi Labの音声チーム責任者・鄢志杰(Yan Zhijie)も転職したが、わずか3ヶ月で再離職している。また、かつてQwenの中核を担っていた技術責任者・周暢(Zhou Chang)もバイトダンスへ移籍し、アリババ側が競業違反として労働仲裁を申し立てている。


背景には、2023年以降のアリババにおける生成AI事業の再編がある。Tongyi LabとQwenを中心に複数の研究チームが統合され、分散開発から集中化へと舵を切った。こうした構造改革が人材流出を招いたと指摘されている。一方で、バイトダンスやファーウェイはAI領域の人材確保を強化しており、バイトダンスはAI職の求人増加率で4年連続トップ、平均月給は5万元(約110万円)を超える水準とされる。