NVIDIAがAIスタートアップLepton AIを数億ドルで買収し、創業者である賈揚清(Jia Yangqing)や共同創業者の白俊傑(Bai Junjie)ら約20名のチームが同社に合流した。Lepton AIは2023年に設立された企業で、企業向けに高効率かつスケーラブルなAIアプリケーションプラットフォームを提供しており、モデルの開発から訓練、デプロイまでを一貫して支える。ゲーム開発スタートアップや科学系スタートアップ向けにもAIクラウドを提供していた。
賈揚清は、カリフォルニア大学バークレー校の博士課程在籍中に、ディープラーニングフレームワーク「Caffe」を開発したことで知られる。Caffeは、高速かつ柔軟なモデル構築を可能にし、研究者やエンジニアから高い評価を受けている。この功績から、賈氏は「Caffeの父」と称されている。
その後、賈氏はGoogle BrainでTensorFlowの研究開発に携わり、FacebookではAIプラットフォームの構築を主導。2019年3月にアリババに入社し、技術副総裁としてAI・ビッグデータ基盤の構築を担当した。2023年に独立起業し、短期間でLeptonを注目企業に育て上げた。チームにはKubernetes関連技術やONNX開発に携わった著名エンジニアも揃い、「技術界のドリームチーム」と称される。
Leptonは2023年5月にCRVや紅杉中国(Sequoia China)、Fusion Fundからエンジェル資金を調達。今回の買収により、これらのVCは2年足らずで大きな利益を確保してイグジットした。AIインフラ市場への期待とLeptonの技術力が評価された結果といえる。
賈氏はこれまで、AI市場の分化を強調し、垂直領域の深掘りとエンジニアリング力の重要性を説いてきた。また、技術者だけでなく一般ユーザーが自然にAIを利用できる環境こそが、今後の商業的成功を左右すると見ている。今回のNVIDIAによる買収は、まさにこうしたビジョンの実現に向けた一手といえるだろう。