中国の自動運転チップ業界において、Black Sesame Technologies(黒芝麻智能)が2024年に初の黒字化を達成したと発表した。純利益は3.13億元(約65億円)に達し、前年の48.6億元(約1010億円)の巨額赤字からの大転換として注目された。しかし実態を掘り下げると、営業損失はなお17.5億元(約365億円)にのぼり、黒字は主に金融商品評価益(約20億元=約420億円)による帳簿上の利益に過ぎなかった。調整後の純損失は13億元(約270億円)で、前年からさらに赤字幅が拡大している。
一方で、売上高は前年比51.8%増の4.74億元(約100億円)、粗利益は1.95億元(約40億円)に達し、粗利益率も24.7%から41.1%へと大幅に改善。BYD、東風、吉利など主要自動車メーカーへの量産納入が売上成長を支えた。しかし、膨大な研究開発費(年間14.35億元=約300億円、総額85億元=約1760億円超)が依然として財務を圧迫している。
こうした背景の中、高性能車載プロセッサ市場で支配的だったNVIDIAに対し、Black Sesame TechnologiesやHorizon Robotics(地平線機器人)などの中国企業が勢力を拡大している。Horizon Roboticsは年間290万セット以上を納入し、シェアは約34%。同社は「ハードウェア+ソフトウェア」モデルを採用し、価格は1システムあたり1000元(約2万円)以下、ハイエンド仕様でも2000元(約4万円)以内に抑えられる。一方、Black Sesame Technologiesは中低価格帯市場に特化し、A1000などの手頃なモデルを量産納品している。
かつてNVIDIAの独壇場だった高性能車載チップは、その高価格(1枚あたり500~3000ドル=約7万~42万円)が普及の障壁となっていた。中国メーカーの低コスト・高性能モデルが普及を後押しし、車載AIの民主化が進行中だ。さらに、蔚来(NIO)や小鵬(Xpeng)などの自動車メーカーも自社開発チップに取り組み、業界構造は急速に変化している。
Black Sesame Technologiesは2024年にL3/L4対応のA2000および武当C1200プロセッサを投入し、次の成長段階に入ろうとしている。激化する競争の中で、開発スピードとコスト最適化のバランスが今後のカギとなる。NVIDIAの支配が崩れつつある今、「Horizon Robotics+Black Sesame Technologies+自社開発」の新たな三極構造が形成されつつある。