中国AIスタートアップDeepSeekは、2月に初めて損益分岐点に達したが、短期的な収益拡大よりも、人工汎用知能(AGI)の開発に焦点を当てる姿勢を崩していない。創業者の梁文鋒(Liang Wenfeng)は、自らの資金力を背景に、中国のテック大手やベンチャーキャピタル、政府系ファンドからの投資提案を断り、規模拡大を拒否。現在は約160人規模の精鋭チームで研究開発に集中している。
同社が提供するR1およびV3モデルのAPIは、主に医療・金融業界から高い需要を集めたが、研究資源を確保するため一時提供を停止する事態にもなった。R1モデルは低コストながら、国内外の有力モデルに匹敵する性能を誇るとして注目されている。
一方で、DeepSeekの控えめな商業姿勢は、アリババやテンセントなどインフラとサービスが整った大手企業が法人市場を掌握する一因となっており、収益の持続性に対する懸念もある。実際、アップルはiPhone向けAI機能にDeepSeekではなく、アリババの「Qwen」を採用すると報じられている。
それでも、テンセントはDeepSeekのオープンソースモデルを活用した後、自社クラウドにおけるAPIの販売が急増。顧客の約半数がDeepSeekモデルを試用し、そのうち20%がローカル仕様のカスタマイズを要求するなど一定の成果も見せている。
今後の課題としては、NVIDIAの次世代チップ入手の難しさが指摘されているが、DeepSeekは勢いを維持すべく、次期モデル「R2」「V4」のリリースを当初予定の5月より前倒しで進めているという。