中国のトップ大学である清華大学、北京大学、上海交通大学が、2025年からAI関連学科の本科生を大幅に増員する方針を相次いで発表した。清華大学と北京大学はともに約150名の増員を予定し、上海交通大学も同規模の拡大を進める。対象は人工知能、集成回路、生物医薬、医療健康、新エネルギーなど、国家が急務とする先端分野が中心となる。
この動きは、1999年の大学大衆化や2006年の工科人材拡充、2017年のAI分野小規模拡大といった過去の教育政策の流れを汲みつつ、国家が掲げる「新質生産力」の育成に応える戦略的な措置となる。中国人工智能産業発展聯盟の報告によれば、今後5年でAI分野の人材不足は100万人以上に達する見込みであり、基礎アルゴリズムやAIチップ、インテリジェントロボットなどの領域で特に人材が求められている。
一方、民間企業もAI人材の争奪に本格的に乗り出しており、DeepSeekのような国内育成チームの台頭を受けて、年俸百万元+ストックオプション+研究資金といった高待遇が提示されるケースもある。ユニコーン企業による学会現場での即時契約や、卒業シーズンを狙った大学内でのリクルーティング活動も活発化している。
大学側の拡大政策は、単なる学生数の増加に留まらず、教育の質的改革を通じてAI基礎研究と応用革新の加速、産業の競争力向上を目指す。さらに、人文・社会科学との融合により、倫理や社会課題への対応力を持つ多様な人材の育成も視野に入れている。
ただし、AI教育は高度な専門性を要する分野であり、教育リソースやカリキュラム設計の不足が質の低下を招く懸念もある。拡大の効果を最大化するためには、教育機関のインフラ整備や産学連携の強化が不可欠となる。