2024年3月5日に北京で開幕した第十四回全国人民代表大会第三回会議において、全国人大代表で科大訊飛(iFLYTEK)董事長の劉慶峰氏が、中国におけるAI産業の発展促進に向けた提言を行った。
劉氏は中国AI産業の自主性と国際競争力強化のため、まず「国産コンピューティング基盤上の自主的大規模モデルおよび産業エコシステム構築」を提言した。現在、中国国内の主要な大規模AIモデルのほとんどが米国製のGPUを使用しており、これを「他人の土地に高層ビルを建てているようなもの」と指摘。政府が資金やリソースを投入し、国産の半導体を用いたAI基盤の開発と普及を支援する必要性を訴えた。
また、急速に普及する生成AI技術が生み出す虚偽情報(AI幻覚データ)の問題にも言及。インターネット上に流布する誤情報がAIモデルに再学習される悪循環を指摘し、安全で信頼できる情報環境の構築を急ぐ必要性を主張した。そのため、安全性の高いデータソース構築や、虚偽情報検知のための技術・ソフトウェア開発を推進し、関連部門が定期的に虚偽データのクリーニングを行う仕組みの整備を求めた。
また教育分野では、生徒一人あたりの教育経費支出構造を見直し、AI教育に特化した予算の拡大を提案。AI通識教育を義務教育段階から拡充し、学校が自らAI技術を導入できる資金調達と柔軟な購入体制を確立し、企業とも連携を促進するよう提言した。さらに、「AI時代の人材モデル」を明確化し、新課程基準へのAI能力の導入を推奨した。
高齢化社会への対応としては、高齢者向けAI活用のさらなる推進が必要であるとして、データの収集・共有・利用に関する統一規格の整備を求めた。医療や介護サービスにAIを活用し、高齢者が日常的にその利便性を享受できるよう、医療サービスや介護支援へのAIの適用を広げ、医療保険の適用範囲も拡充すべきだと主張した。
雇用分野では、AI技術の導入で失業が加速するリスクに備えるため、「AI雇用動向モニタリングプラットフォーム」を設置し、AIがもたらす失業リスクの監視と早期対応を提案。AIに置き換えられる職業については一定期間の失業緩衝期を設けるほか、「AI失業保障特別保険」の試験的導入を推進し、労働市場の安定を図るべきだと訴えた。
劉慶峰氏のこれらの提案は、中国のAI政策の今後の方向性を示す重要な内容であり、同時に各国が直面するAI時代の社会課題に対して具体的な解決策を示したものとして注目される。
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科大訊飛(iFLYTEK)公式サイト:https://www.iflytek.com