AIの進化は、新たな産業革命を引き起こし、テンセントはその最前線に立っている。特に中国のAI技術企業DeepSeekとの統合は、テンセントのエコシステムを大きく変革し、WeChatやQQ、ブラウザ、音楽サービスなどの主要プロダクトにAI機能を深く組み込んでいる。この統合により、検索やレコメンドシステムが大幅に改善され、商業化の加速が期待される。実際、DeepSeekとの提携を発表した後、テンセントの株価は急上昇し、5日間で20%近くの上昇を記録した。

一方で、テンセントの海外投資戦略には課題が残る。韓国のKakaoは、同社のメッセージングアプリ「Kakao Talk」にAI機能を拡充し、AI検索やショッピングアシスタントを導入しようとしているが、市場に適した大規模AIモデルが存在せず、最終的にOpenAIとの提携に至った。しかし、OpenAIの閉鎖的な技術環境は、企業の柔軟なAI戦略を妨げる可能性がある。テンセント自身がDeepSeekのような開放的なAI技術を採用している点を考えると、今後の海外展開においてもオープンソース戦略がカギとなるかもしれない。

また、ゲーム業界においてもAIの影響が拡大している。Tencentの投資先であるKraftonは、AIを駆使したゲーム開発を進め、「PUBG」や新作「InZOI」にAI NPCを導入する計画を発表。一方、NetEaseも「逆水寒」にDeepSeekを組み込んだAIキャラクターを実装し、AI技術をゲームに応用する取り組みを加速させている。

AIの発展により、テンセントを中心とする中国のテック企業は、AI主導のサービス革新とグローバル展開の両立を目指している。しかし、海外市場では技術の閉鎖性や規制の問題が立ちはだかる。今後の展開次第では、テンセントのAI戦略が、中国発のAI商業化の新たなモデルとなる可能性が高い。