BaiduとByteDanceの幹部が遠隔で論争、DeepSeekの影響でMoonshot AIが重点をシフト、テンセント、WeChatでDeepSeekのグレースケールテストを実施中

出典:https://www.163.com/dy/article/JOH8CH0105566ZHB.html

概要ポイント
  • テンセント、WeChatの検索機能にDeepSeek-R1を試験導入。
  • BaiduとByteDanceの幹部、DeepSeekの影響を巡って論争。
  • Moonshot AI、強化学習の研究に注力し戦略を転換。
  • Amazon、AlexaのAI回答精度問題でアップデートを延期。
  • Meta、高評価の社員を解雇し、低評価社員削減の方針に疑問の声。
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テンセントは、WeChatの検索機能「搜一搜(Souyisou)」において、AIモデル「DeepSeek-R1」をグレースケールテストで導入している。このテストに参加できる一部のユーザーは、チャット画面の検索欄で「AI検索」と表示されるボタンをクリックすることで、DeepSeek-R1モデルを無料で利用できる。WeChatの「AI検索」機能は、通常の検索よりも高度な質問応答や多様な情報提供が可能となっており、より自然な対話形式で検索結果を得ることができる。また、DeepSeekの導入はWeChat以外にも広がる可能性があり、テンセントクラウドのAIコードアシスタントや、AIパーソナルアシスタント「元宝(Yuanbao)」など、他のサービスにも組み込まれる計画が進められている。

一方、百度(Baidu)の副総裁であり、百度クラウド部門の責任者である沈抖(Shen Dou)氏は、社内会議でDeepSeekの影響について言及した。沈氏は、「DeepSeekの台頭は短期的には百度に影響を及ぼすものの、長期的には技術の発展により業界全体の成長が促されるため、利益の方が大きい」と前向きな見解を示した。しかし、DeepSeekの市場拡大により最も影響を受けるのは百度ではなく、字節跳動(ByteDance)のAIチャットボット「豆包(Doubao)」だと指摘した。豆包は、大規模AIモデルを活用しており、トレーニングやプロモーションのコストが高いため、DeepSeekのような競争力のあるモデルが登場すると、そのシェアを奪われる可能性があるという。

これに対し、字節跳動(ByteDance)のAIクラウド部門「火山引擎(Volcano Engine)」の総裁である譚待(Tan Dai)氏は、「大規模AIモデルのコスト削減は技術革新によって実現されるものであり、不確かな憶測を語るべきではない」と百度(Baidu)の見解に反論した。彼によれば、豆包1.5Proモデルのトレーニングおよび推論コストは、DeepSeek V3よりも低く、国内の他のAIモデルと比較しても競争力があると強調した。さらに、字節跳動(ByteDance)のCEOである梁汝波(Liang Rubo)氏は、「DeepSeekの長文思考(Long Chain Reasoning)機能は革新的なものではなく、OpenAIが2023年9月に発表した技術と同様のものである」と指摘し、自社の技術開発が遅れたことを悔やむコメントも残した。

また、AI企業の月之暗面(Moonshot AI)は、最新の戦略として「SOTA(State-of-the-Art、最先端)の結果を継続的に達成する」ことを最優先目標に掲げた。2025年には、特に多モーダル処理や長文推論能力の向上を重点的に進める計画を発表している。これまで月之暗面(Moonshot AI)は、主に大規模なテキスト処理AI「Kimi Chat」の開発に力を注いできたが、DeepSeekの成功を受け、今後は強化学習(Reinforcement Learning)の研究に注力する方針に切り替えたと報じられている。DeepSeekとの競争の中で、月之暗面(Moonshot AI)がどのように差別化を図るのか注目が集まる。

さらに、Amazonは、AIアシスタント「Alexa」の新バージョンのリリースを延期した。当初は2月26日にアップデートを予定していたが、AIの回答精度が低く、一部の質問に誤った回答を返す問題が発生したため、3月31日以降にリリースがずれ込む可能性があると報じられている。同様に、Metaも社内の人事方針で問題を抱えている。高評価を得ていた一部の社員が突然解雇されたことで、低評価の社員削減を掲げていた会社の方針に疑問の声が上がっている。解雇された社員の中には、2023年の評価で優秀とされた者も含まれており、社内SNS「Workplace」では、多くの社員が不満を表明している。

AI業界では新技術の導入と企業間競争が激化する中で、各企業が次の戦略を模索している。特に、中国国内のAI競争は、百度(Baidu)、字節跳動(ByteDance)、DeepSeek、月之暗面(Moonshot AI)といった企業が互いに影響を及ぼしながら発展しており、今後の市場動向に注目が集まる。