中国のAI業界では、DeepSeekの急成長を受けて、新たな有力スタートアップが台頭している。特に注目されるのが、Stepfun、ModelBest、Zhipu、Infinigence AIの4社だ。Stepfunは2023年に設立され、1兆パラメータ超の大規模言語モデル「Step-2」を開発。AGI(汎用人工知能)の研究にも力を入れ、Tencentなどの投資家や上海市政府の支援を受けながら急成長を遂げている。同社のマルチモーダルAI「Step-1V」も、視覚認識分野で高評価を受けており、APIの外部利用も急増している。
ModelBestは、清華大学の研究者によって設立された企業で、効率性を重視した小型言語モデルの開発に特化。最新モデル「MiniCPM 3.0」は、わずか40億パラメータながらGPT-3.5に匹敵する性能を発揮し、スマートフォンやPC、自動車システム、スマート家電など幅広いデバイス上でリアルタイム処理が可能。オープンソースの研究機関「OpenBMB」としても活動し、GitHubやHugging Face上での公開モデルが注目を集めている。2024年12月には、数千万ドルの資金調達を発表し、さらなる開発に取り組んでいる。
Zhipuもまた、清華大学発の企業であり、基盤モデルの開発と応用の両面で成長を遂げている。代表的な製品には、対話型AI「ChatGLM」や、動画生成AI「Ying」があり、OpenAIのChatGPTやSoraに匹敵する技術力を誇る。最新の大規模言語モデル「GLM-4-Plus」は、高品質な合成データを活用し、GPT-4に匹敵する性能を実現。また、視覚認識AI「GLM-4V-Plus」は、ウェブページや動画の解釈が可能で、より高度な「エージェント型AI」へと進化している。しかし、2025年1月には米国の輸出管理規制の対象となり、関連企業が規制リストに追加された。これにより米国製のハードウェアや技術の調達が困難になる可能性があるが、Zhipuは引き続き国内投資家の支援を受けながら成長を続けている。
Infinigence AIは、他の企業と異なり、AIモデルの開発ではなくインフラの最適化に特化。異種チップを組み合わせてAI処理を効率化する「ヘテロジニアス・コンピューティング・クラスター」の開発を進めている。米国の半導体規制により、中国企業はNVIDIAの最新チップの入手が困難となっているが、Infinigence AIの技術は、AMDやHuaweiなど異なるブランドのチップを統合し、AIトレーニングの効率を向上させる。同社は「Infini-AI」クラウドプラットフォームを運営し、「HetHub」と呼ばれるトレーニングシステムを開発。これにより、中国企業のAI開発環境を支える重要な役割を果たしている。
これらの企業は、それぞれ異なるアプローチで中国のAI業界を牽引している。Stepfunは大規模モデルの開発、ModelBestは小型モデルの最適化、Zhipuは多機能AIの展開、Infinigence AIはインフラ整備と、明確な戦略を持って競争力を高めている。米中技術競争の影響を受けながらも、各社は国内外の市場で存在感を強めており、今後の成長が注目される。