中国ゲーム大手・miHoYoは、AI領域での存在感をさらに強めている。2025年7月、同社は資本金5億元(約110億円)で新会社「上海米哈游無定谷科技有限公司(無定谷科技)」を設立。これは過去のAI関連会社設立の中で最大規模となる。事業内容はソフトウェア開発やゲーム制作に加え、AI応用ソフトウェア分野にも及ぶ。
miHoYoはすでに2018年からAI研究部門「逆エントロピー研究部」を立ち上げ、独自の大規模言語モデル「Glossa」を開発。2022年には同部門が手掛けたデジタルヒューマン「鹿鳴」がBilibiliでの初配信で66万人以上の視聴者を集め、アカウント登録者数は150万を突破した。
一方、創業者の蔡浩宇(Cai Haoyu)は2023年に同社董事長を退任し、2024年には米国シリコンバレーでAIゲーム企業「Anuttacon(アナッタコン)」を設立。同社にはMicrosoftやMeta、Bilibili、miHoYo出身者らが名を連ねる。中核技術者には、自動運転企業XPengでインフラを担ったErik Li(エリック・リー)も参加している。
Anuttaconの第1弾AIネイティブゲーム《Whispers from the Star》は、2025年7月にSteamで体験版が公開。天体物理学専攻の少女・Stella(ステラ)とユーザーが対話しながら惑星からの脱出を目指すRPGで、物語とAI対話を融合させた構造となっている。
この動きに呼応するかのように、2025年7月にはイーロン・マスク(Elon Musk)が発表したAIガールフレンド「Ani(アニ)」が話題に。直後、AnuttaconはAniに《Whispers》をプレイさせた動画を公開し、マスク本人をSNSでタグ付けして注目を集めた。AniがStellaに語りかけ、Stellaが冷静に返すやり取りは、感情主導型とストーリー主導型というAI体験の方向性の違いを際立たせた。
miHoYoはAIによるストーリーテリングとゲーム体験の融合を通じて、次世代エンタメの新潮流を牽引しようとしている。